高松高等裁判所 昭和40年(ラ)27号 決定 1965年6月10日
抗告人 金子実男(仮名)
遺言者 金子辰男(仮名)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣旨並びに理由は、別紙記載のとおりである。
当裁判所は、抗告人の本件遺言執行者選任の申立を失当として却下さるべきものと考える。
その理由は、左に附加するほか、原審判理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。
民法第九六八条の自筆証書による遺言は、日附の記載が必要とされ、日附は年月日を記載すべく、年月の記載だけあつて、日の記載のない場合は、日附の記載ありとはなし難く、かかる遺言は無効と解すべきところ、本件では、「昭和二九年九月吉日」の「吉日」の記載をもつて日の記載といえるかどうかが問題となるが、世上一般に「吉日」とする日は、一ヵ月中特定の一日ではなく、更に各人が、主観的に或る日を「吉日」とする場合もあることを考えれば、「吉日」の記載をもつては、当該の月の暦日が特定せず、結局右「昭和二九年九月吉日」の記載は、年月のみの記載があつて日の記載のない場合ということになるから、本件遺言は、日附の記載のない無効のものといわなければならない。
そうすると原審判は相当である。
よつて、本件抗告は理由がないから主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 呉屋愛永 裁判官 杉田洋一 裁判官 鈴木弘)
抗告理由 省略